王太子殿下と婚約していますが、卒業パーティーで破棄するつもりです(※伯爵令嬢にすぎない私から)
3. 道中
 私は馬車の中から、リズミカルに揺れる王都の景色を眺めた。

(卒業パーティーが終わったら、すぐさま王都を去って領地に戻ることになるのかな……)

 領地に戻ったら、すぐに王都が恋しくなるだろう。

 学園に通っている間にすっかり見慣れた風景だったけれど、今一度しっかりと目に焼き付けておこうと思った。


 アルナルディ領は王国の北部に位置する。

 元々アルナルディ家は、現在所有している領地のごく一部を与えられた下位貴族だった。

 北部は自然環境が厳しく、かつては決して豊かとはいえない地域だった。

 ところが、アルナルディ家が治めるようになって以降、その領地のみ農作物の生産量が飛躍的に増えた。

 北部全体が特に酷い天候不順による凶作に苦しんだときでさえも、アルナルディ領だけは毎回少ない被害で乗り切った。

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