王太子殿下と婚約していますが、卒業パーティーで破棄するつもりです(※伯爵令嬢にすぎない私から)
その経営手腕が評価され、今ではアルナルディ家は伯爵位を与えられ、北部一体はアルナルディ家の領地となっている。
そうして、私はお嬢様然として王都にある王立学園に通うことができ、セルジュ殿下とも出逢えたのだった。
けれど、アルナルディ家が奮ったのは、経営手腕などというものではなかった。
悪どいことはしていないけれど、声を大にしていうこともできない。
それこそが、我がアルナルディ家が代々ひた隠しにしてきたことだった──
私は自分が握り締めていたジュエリーボックスに視線を落とした。先ほど邸を出発するときに、執事から受け取ったものだ。
(殿下の前に立ったらすぐに泣いてしまって、うまく話せない気がする)
けれど、殿下は私なんかよりもずっと聡い方だ。
制服姿の私を見ただけでも、きっとその意図をある程度察してくれる。
さらにこれを返却したなら、間違いなくダメ押しとなる。