王太子殿下と婚約していますが、卒業パーティーで破棄するつもりです(※伯爵令嬢にすぎない私から)

 多くを語る必要はないはずだ。

 卒業パーティーという場で、わざわざ大声を張り上げて耳目を集め、その上で婚約破棄などという暴挙に出るつもりは毛頭ない。

 ほかの誰にも聞かれることなくこっそりひっそりと、それも手短かに済ませられるなら、それに越したことはない。


(それにしても、殿下はどうしてこれを卒業パーティーの場で身につけさせたがったのだろう?)

 たしかに学生にとっては最重要ともいえるイベントだけれど、正直そこまで気合いを入れる必要はないと思う。

 それなのに、3日前のセルジュ殿下は切羽詰まったようで、余裕のカケラもなかった。

「卒業パーティーの日、これをつけてきてほしい」

 そう言ってやや強引に手渡されたジュエリーボックス。

 中に入っていたのは、宝石が散りばめられたビブネックレスだった。
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