王太子殿下と婚約していますが、卒業パーティーで破棄するつもりです(※伯爵令嬢にすぎない私から)
セルジュ殿下は、ネックレスを受け取ることに躊躇している私を抱き寄せた。
「な、な、な……!」
それまでの殿下は間違いなく紳士で、婚約しようとも不埒なことは一切したことがなかった。
それなのに殿下は、私のことをしっかりと抱き締めたのだった。
私は完全に固まってしまった。
「クロエ、僕は君を心から愛しているし、何があろうと絶対に君と結婚するからね」
(ま、まさか殿下は何か勘付いているんじゃ!?)
そして……
(ああ、もう! 思い出すだけで赤面してしまう!)
挨拶のキスだって、手にも頬にも決して触れることはなかったはずなのに……
あのとき、殿下の唇は私の唇に触れていたどころではなかった。角度を変え、何度も何度も重ねられた。