王太子殿下と婚約していますが、卒業パーティーで破棄するつもりです(※伯爵令嬢にすぎない私から)
4. 王太子登場
 私は咄嗟に後ろ手にして、ジュエリーボックスを背中に隠した。

「アルナルディ家の馬車か?」

「そうですが……」

 御者も突然のことに驚いているのが伝わってくる。

 人の往来も多い街中の大通りだ。

(まさか強盗ではないよね……)

 そうは思いつつも、ジュエルボックスを握る手が汗で湿ってきた。


 首を縮めて右側のガラス窓から前方を覗いた。

 ガチャッ!

 私が覗いているのとは反対の、左側についている扉が乱暴に開けられた。

「ひゃあー!」

 恐怖で目を閉じた。


「クロエ……」

 その声に、閉じたときと同じ速さで目を開けた。

「えっ? どうして……」

 息を切らせながら私の名を呼んだのは、セルジュ殿下だった。

「やっぱり制服だー!」

 殿下が両手で顔を覆い、天を仰いで絶望したように叫んだ。

(『やっぱり』ってどういうこと!?)

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