王太子殿下と婚約していますが、卒業パーティーで破棄するつもりです(※伯爵令嬢にすぎない私から)

 あたふたと言い訳を考える私のことなどお構いなしに、殿下は『失礼するね』と言って馬車に乗り込み、私の真横に腰かけた。

「学園に行く前に寄り道したいんだけどいい?」

(寄り道? こんなときに?)

 セルジュ殿下は、真剣な表情で私の返事を待っている。

(これ、断っても絶対に寄り道する気ですよね……)

 もしかしたら殿下は私に着替えさせるつもりなのかもしれない。

 だったら、観念するしかない。

「卒業パーティーに間に合うのなら……」

「それについては対策しているから安心して」

 私は、『対策?』と首を捻った。

 けれど、これほど派手な登場をしたくらいだ。

 きちんと計画を立てた上での行動なのだろう。

 これもまた大切な思い出のひとつとして加わる予感がした。

「それなら……」

「ありがとう」

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