王太子殿下と婚約していますが、卒業パーティーで破棄するつもりです(※伯爵令嬢にすぎない私から)
5. 功労者も登場
 祭壇の向こうから現れたその何かは、声を発した。

「ここに、ふたりが夫婦になったことを認めます」

(はあ?)

「だ、誰ですか?」

「大司教様だよ」

 私の狼狽をよそに、セルジュ殿下は上機嫌で答える。

「こんな小さな教会にどうして大司教様が?」

「僕から頼んで来ていただいたんだ。王族の結婚式は大司教様が執り行う決まりになっているから」

 私はかぶりを振りに振りまくった。

「いやいやいやいや! 大司教様がいたとしても、こんな結婚式が認められるはずないです。王太子殿下の結婚式がこれではダメですよ!」

「いいや、ダメなんかではないよ。そうですよね?」

 セルジュ殿下が無人のはずの会衆席を振り向いた。

「ああ、私たちが証人だ」

「誓いの言葉もこの耳でしっかり聞いたし、誓いのキスも見届けたわ」

 すくっと立ち上がったのは、国王陛下と王妃陛下だった。

(まさか両陛下がそんなところに隠れていたというの? いつから?)

 王妃陛下は、無理な体勢がツラかったのだろう。ずいぶんとお疲れの様子だ。

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