王太子殿下と婚約していますが、卒業パーティーで破棄するつもりです(※伯爵令嬢にすぎない私から)

「どうしてこんな強引なことを……?」

 ありとあらゆる未来を想像してきたつもりだった。どんな結果になろうとも上手く立ち回れるように。

 しかし、これはどれとも大きくかけ離れている。

(婚約破棄するつもりだったのに、婚姻を結んでしまうことになるなんて!)

 こんなのは騙し討ちではないか。

 目眩がして足元がフラついた。


 私を支えつつ、セルジュ殿下は私の顔を覗き込む。

「クロエが何度も逃げるからだよ」

「何……度も……?」

 身に覚えがない。場合によってはこれから逃げる覚悟はあるけれど、これまでは一度たりとも逃げたことはない。

「今度が『クロエと結婚する最後のチャンス』だと母上からは忠告されたから、いっそ結婚してしまえと思ってね」

 そこで魅力的に微笑まれても、泣きたいほど困る。

「無理です!」

「無理じゃないよ。現に僕らの結婚は認められた」

「だって……だって私は……」

(白状するしかない! たとえアルナルディ家が取り潰しになったとしても!)
< 27 / 33 >

この作品をシェア

pagetop