王太子殿下と婚約していますが、卒業パーティーで破棄するつもりです(※伯爵令嬢にすぎない私から)
「どうしてこんな強引なことを……?」
ありとあらゆる未来を想像してきたつもりだった。どんな結果になろうとも上手く立ち回れるように。
しかし、これはどれとも大きくかけ離れている。
(婚約破棄するつもりだったのに、婚姻を結んでしまうことになるなんて!)
こんなのは騙し討ちではないか。
目眩がして足元がフラついた。
私を支えつつ、セルジュ殿下は私の顔を覗き込む。
「クロエが何度も逃げるからだよ」
「何……度も……?」
身に覚えがない。場合によってはこれから逃げる覚悟はあるけれど、これまでは一度たりとも逃げたことはない。
「今度が『クロエと結婚する最後のチャンス』だと母上からは忠告されたから、いっそ結婚してしまえと思ってね」
そこで魅力的に微笑まれても、泣きたいほど困る。
「無理です!」
「無理じゃないよ。現に僕らの結婚は認められた」
「だって……だって私は……」
(白状するしかない! たとえアルナルディ家が取り潰しになったとしても!)