王太子殿下と婚約していますが、卒業パーティーで破棄するつもりです(※伯爵令嬢にすぎない私から)
しかしあるとき、気がついた。
きっかけは何だったのだろうか?
そんなものはなかったかもしれない。
なら、当初は殿下に話しかけられただけで心拍数が跳ね上がってオタオタしていた私でも、徐々に慣れてある程度の冷静さを保てるようになったから?
兎にも角にも私は、殿下が私と話すときだけ、わずかに高揚して早口になっていることに気がついてしまった。
すると、それまではとてもではないけれど畏れ多くて憧れまでに留まっていたはずの気持ちは、一瞬にして恋へと昇華した。
でも、このことは胸に秘めておくつもりだった。
(好きになってしまったまでは仕方ないにしても、身の程は弁えないと……)
そう思っていたのだ。
それなのに!
学園生活の半分を過ぎた15のとき、セルジュ殿下の口からはっきりと告げられたのだ。
『クロエのことが好きだ』と。