王太子殿下と婚約していますが、卒業パーティーで破棄するつもりです(※伯爵令嬢にすぎない私から)

「母上は『こうなったら正攻法で真っ向から気持ち伝えて、本気度を示しなさい』って。それから、王家のネックレスを僕に託してくれて、時間を戻してくれた。だから、僕は僕の愛を真摯に伝えたはずだった……」

(それがあの殿下らしからぬ情熱的なキス……)

 知らず私の顔は赤くなった。

「それなのに3度目制服姿の君を目にしたときの絶望感といったら!」

(それは、こっちにはこっちでのっぴきならない事情があったからで……)

 それでもたしかに殿下の気持ちは十分過ぎるほど伝わった。

 だからこそ、私も胸が痛かったのだ。

「3度目は、卒業パーティーの会場を王宮近衛軍が警備という名の下、君を逃がさないように包囲していた。それなのに、またしても君は婚約破棄だけ済ますと、まんまと逃げだしてくれたね?」

(そんな未来の話されても、私は知りません!)

「けれど、包囲網が功を奏した。ようやく婚約破棄の理由が分かったんだから」

 私は目を見張った。
< 31 / 33 >

この作品をシェア

pagetop