王太子殿下と婚約していますが、卒業パーティーで破棄するつもりです(※伯爵令嬢にすぎない私から)
セルジュ殿下から届けられたドレスは、箱から出してすらいない。
箱を前に、開けられない哀しさから何度泣いたか知れない。
しかし箱から出してしまったら、私はきっと着たいという衝動を抑えられないと分かっていた。
だから、箱を開けたいという葛藤を我慢する他なかった。
どうにか踏ん張れたのは、どんなドレスか知っているがゆえにだと思う。
もし知らなかったら誘惑に負け、ひと目見るだけ……袖を通すだけ……と転落し、最終的には何だかんだ理由をこじ付けて、卒業パーティーにも……という気になっていたことだろう。
私が見てもいないのにどんなドレスなのか知っているのは、セルジュ殿下とデザインを決めたからだった。
当初の予定はそうではなかったんだけれど。