王太子殿下と婚約していますが、卒業パーティーで破棄するつもりです(※伯爵令嬢にすぎない私から)

「僕がクロエに似合うと思うドレスを選んで贈ってもいいだろうか?」

 セルジュ殿下はこう申し出てくれた。

「うれしいです!」

 嘘偽りのない、本心からの言葉だった。

(セルジュ殿下のセンスはアレ……う、ううん!)

 独特というか、私とはちょっと(?)違うものの、私は本当にうれしかった。


 けれど、それから数日が経過して、殿下は気が変わったようだった。

「あれから考えたんだけど、僕の礼服は君に選んでほしくて。それとお揃いにしたいんだ。目立たないように、あくまでこっそりとなんだけど……」

 殿下がその慣例を知っているとは思わなかった。

 ふたりの関係が公になっていないカップルでも、卒業パーティでは小さなアイテムをペアにして身につけたりする。
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