王太子殿下と婚約していますが、卒業パーティーで破棄するつもりです(※伯爵令嬢にすぎない私から)

 そうすることで、卒業後は婚約なりをする用意があることを同級生に知らせるのだ。

 まだはっきりとは話せないけれど、同じ学び舎で過ごした学友たちにはひと足先に打ち明けたい。そんな思いから始まった伝統なのだと思う。

「だから一緒に相談して衣装を決めるのはどうかな?」

 その提案は私をさらに喜ばせた。

「とても素敵なアイデアだと思います!」

 あの頃は大きく不安に思ってはいたけれど、まだ何とかなるはずだと信じてもいた。

(お父様もお母様も領地で探し回ってくれているんだもの。きっと方策はある……)


 それから1週間と経たないうちに、私は放課後王宮に呼ばれ、デザイナーさん(もちろん超一流の!)を交えての打合せに参加した。

 そうして殿下と私は、控えめに対となっているスーツとドレスを決定したのだった──

< 9 / 33 >

この作品をシェア

pagetop