不憫な妹が可哀想だからと婚約破棄されましたが、私のことは可哀想だと思われなかったのですか?
 私は、教室まで来ていた。
 中を覗いてみると、思っていた通りマグナード様がいた。
 よく考えてみれば彼の居場所は知らなかったので、ここで見つかったというのは幸いである。

「マグナード様、少しよろしいでしょうか?」
「イルリア嬢……」

 私は少し安心しながら、教室の中に入っていった。
 放課後ということもあって、中には彼しかいない。これならミレリア嬢のことなども含めて、色々と話をすることができそうだ。

「ミレリア嬢との話し合いは、終わったのですか?」
「ええ、彼女はマグナード様に感謝していましたよ。ヴォルダン伯爵令息には、散々煮え湯を飲まされていたようですから」
「……なんというか、複雑ですね」

 ミレリア嬢からの感謝を伝えると、マグナード様は微妙な顔をしていた。
 彼は、感謝されていることについて反省している。だからこそ、素直に喜ぶことなどはできないのだろう。
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