不憫な妹が可哀想だからと婚約破棄されましたが、私のことは可哀想だと思われなかったのですか?
 ミレリア嬢は、私よりも身分が上の伯爵令嬢だ。
 そんな彼女でも、私とまったく同じ大きさの部屋で暮らしているというのは、少し意外なことである。
 別に私は気にならないのだが、不平や不満を述べる人などはいないのだろうか。例えばナルネア嬢とかは、文句を言ってそうだ。

「あまり広い部屋ではないので、私よりも身分が上の方々は窮屈だと思っていそうですね」
「イルリア嬢だって、そう思ったのではありませんか? ご実家の自室が、このくらいの大きさという訳ではないでしょう?」
「……確かに言われてみれば、そうかもしれません。入学した時はそんな風に思っていたような気がします。今はもう、居心地が良すぎるというか」
「住めば都、ということでしょうかね」

 私は、ミレリア嬢とそんな会話で花を咲かせていた。
 なんというか、今日はこれから楽しい時間が過ごせそうだ。そんなことを思いながら、私は笑顔を浮かべるのだった。
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