不憫な妹が可哀想だからと婚約破棄されましたが、私のことは可哀想だと思われなかったのですか?
 私の言葉に、マグナード様は苦笑いを浮かべていた。
 しかし彼は大丈夫そうだ。なんとなくではあるが、そう思う。

「所でイルリア嬢は、夏休みの予定などはあるのですか?」
「え? いえ、特には何もありません」
「ご実家に帰られるつもりなのでしょうか?」
「それはもちろん、両親に顔を見せに帰るつもりです」

 マグナード様からの質問に答えてから思い出した。
 よく考えてみれば、実家に帰るとエムリーと顔を合わせることになる。それはとても気まずい。
 とはいえ、お互いに帰らないという選択肢を取ることはないだろう。それについては、覚悟をしておくしかなさそうだ。

「マグナード様も、戻られるのですよね?」
「ええ、そのつもりです。色々とありましたから、色々と言われることになるとは思いますが、この際思い切り叱ってもらうことにします」
「それは……」

 マグナード様の言葉に、私は少し面食らっていた。
 しかし、それはきっと彼にとっては必要なことなのだろう。
 そんなことを話しながら、私とマグナード様は朝の時間を過ごすのだった。
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