不憫な妹が可哀想だからと婚約破棄されましたが、私のことは可哀想だと思われなかったのですか?
「あがっ……」
「……エムリー!」

 そして次の瞬間、エムリーは馬車の壁に頭をぶつけた。
 鈍い音が響いて、流石の私も心配してしまう。いやというか、エムリーから返答がないのだが。

「エムリー……っ! これは」

 エムリーの状態を確認しようとした私は、窓の外を見てあることに気付いた。
 外には、大きな体をした獣がいる。あれは熊だろうか。かなり近くにいるみたいだ。
 ということは、馬車に何が起こったかもわかってくる。恐らく、馬が怖がったことによって、激しく揺れたということだろう。

「とりあえず静かにしておかないと……」

 私は、窓の外を見ながらエムリーの体を慎重に動かす。
 血は流れていないし、息はしている。しかし、意識がないということは、まずい状態なのかもしれない。
 とはいえ、今御者にことを知らせてもどうにもならないだろう。あの熊がこちらを気にせず、御者が馬を鎮められることを祈るしかない。
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