不憫な妹が可哀想だからと婚約破棄されましたが、私のことは可哀想だと思われなかったのですか?
 そのブライト殿下は、ロダルト様の方にあたっている。捕まった彼の様子を見てくれているのだ。

「理解しているのか理解していないのかはわからないけれど、あなたは記憶を失っていたのよ」
「……」

 私の言葉に、エムリーはゆっくりと目をそらした。
 記憶喪失について、彼女はどう認識しているのだろうか。それは実の所、あまりわかっていない。
 その件については、お医者様からも伝えてくれているはずなのだが、それに対する反応は曖昧なものだったそうだ。

「記憶喪失の間のことを、記憶を取り戻した時に覚えていないということはあるらしいけれど、あなたもそうだということなのかしら?」
「……いえ、覚えていますよ」
「え?」

 私の疑問に対して、エムリーの返答はおかしかった。
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