不憫な妹が可哀想だからと婚約破棄されましたが、私のことは可哀想だと思われなかったのですか?
「え、えっと、それはまあ、あなたのせいではないというか……いいえ、あなたとエムリーを切り離して考えるのが正しいのかはわからないのだけれど」
「……申し訳ないなんて、思っていません。私はただ、自分の野望のために努力していただけで――なんて言っていますけれど、もう一人の私も反省していますから」

 最近のエムリーと過去のエムリーは、お互いに主導権を握ろうとしていた。
 そのように争うのは、精神的に大丈夫なのだろうか。その点に関して、私は心配だ。

「もう一人の私にも、私の記憶は残っていますからね。まあ、今はそれを素直に言い表せないというだけで――そんなことは、決してありま――ふふ」

 何故だかよくわからないが、過去のエムリーの立場は弱かった。
 エムリーとして過ごした時間は、過去の方が長いはずであるというのに、主導権を完全に握られている。
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