不憫な妹が可哀想だからと婚約破棄されましたが、私のことは可哀想だと思われなかったのですか?
 ロダルト様は、私がマグナード様と話していたことに怒っていた。
 その怒りから考えると、彼が私に対してそれなりに重たい思いを抱いていたのは、間違いないと考えていいだろう。

「はっきりと言って、彼は危険な人物です。私はそれを感じ取っていましたが、お姉様には伝えていませんでした」
「まあ、それは仕方ないことね。今こうして伝えてくれただけでも充分だわ」

 ムドラス伯爵令息とヴォルダン伯爵令息が襲われたことを聞いて、エムリーはそれをしそうな人物のことを思い出した。
 それによって記憶が刺激されて、記憶を取り戻すことになった。恐らく、そういうことなのだろう。
 何はともあれ、エムリーが記憶を取り戻せたことは良かったことだ。私にとっては最近のエムリーの人格が残ったこともいいことよりではあるし、今はそれを喜ぶとしよう。
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