不憫な妹が可哀想だからと婚約破棄されましたが、私のことは可哀想だと思われなかったのですか?
「ああ、それで、そのムドラス伯爵令息はどうなんですか?」
「まあ、意識は取り戻しました。ずっと文句を言っているみたいです。お世話してくれている使用人の人達が可哀想で仕方ありません」
「元気そうで何よりです……」

 ムドラス伯爵令息のことを聞くと、ミレリア嬢は不快そうな顔をした。
 なんというか、私も彼に対する同情する気持ちが薄れてくる。やはりムドラス伯爵令息は、どうしようもない人かもしれない。

「一応、ムドラスから話は聞いています。といっても、私が聞いた訳ではなく、使用人さん達を通じて聞かせてもらったということですが……」

 ミレリア嬢は、忌々しそうにしていた。
 長年苦しめられてきた弟に対して、やはりまだまだ嫌悪感があるのだろう。それがその表情からよく伝わってきた。
 しかしそれでも、彼女は使用人達から話を聞いてくれていた。それは恐らく、私達のためだろう。彼女はこちらの状況はわからなかっただろうし、少しでも情報を集めようとしてくれていたのかもしれない。
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