『彩生世界』の聖女じゃないほう ~異世界召喚されました。こうなったらやってみせます完全攻略~
イスタ邸に到着して二時間後の夕食の席。
(美生の告白は上手く行ったみたいね)
私は、明らかに二人の間に流れる空気が変わったのを感じた。――というより、これでは誰の目から見てもそうか。
「これ、カロテっていうんですか。美味しいですね」
「そうか。俺の分もやろう」
ハンバーグっぽい料理に添えられた人参に似た野菜を食べた美生が、カサハに話し掛ける。それを受けてカサハが、自分の分のカロテを美生に――フォークで刺した状態で差し出す。
「キャラ変わってない?」
ツッコミを入れたのは、私ではなくルーセンだ。私は美生と恋人なったカサハがこういうタイプにシフトするのは知っているので、そこまで驚きはしなかった。……実際に目の当たりにした衝撃は別として。
「でもカロテだと、格好つかないね。カサハが苦手な野菜を、ミウに押し付けてるだけの構図に見えるよ」
「ルーセン……」
「え?」
ルーセンが少し意地悪い顔をして、茶々を入れる。美生の方は、目の前のカロテとカサハを交互に見る。カサハは……苦々しい顔でルーセンを睨んでいた。
そんなカサハに視点を定めた美生が、小さく笑う。それから彼女は、差し出されたカロテをパクリと食べた。
(甘いわー……さすが乙女ゲーム)
まあ確かにわかりやすい甘さという点では、カサハルートが一番そうだった。彼の場合、レテの村からイスタ邸に着くまでに気まずい期間があるせいか、その温度差がわかるシナリオになっている。
(そして一番、艶っぽいのよね)
『彩生世界』において、ナツメは塩対応だし、ルーセンは罪悪感から弱気だし。ロイくんは逆に恋愛上級者過ぎて、爽やかに愛を語ってしまう。想いが通じたらグイグイ押してくるという少女漫画的展開を誰よりやってくれるのは、間違いなくカサハだろう。
(美生とこうなっているということは、例のイベントが起きていたというわけで)
はたと思った瞬間には、もう一枚絵を思い浮かべてくれる優秀なゲーマー脳。ついでに回想モード機能も付いているらしく、台詞まで自動送りで流してくれる。
(うん。やっぱり美生と部屋を別にしていて正解だった……)
私は一人気まずい気持ちになって、自分の皿のハンバーグ(仮)を切り分ける行為に集中するふりをした。
(美生の告白は上手く行ったみたいね)
私は、明らかに二人の間に流れる空気が変わったのを感じた。――というより、これでは誰の目から見てもそうか。
「これ、カロテっていうんですか。美味しいですね」
「そうか。俺の分もやろう」
ハンバーグっぽい料理に添えられた人参に似た野菜を食べた美生が、カサハに話し掛ける。それを受けてカサハが、自分の分のカロテを美生に――フォークで刺した状態で差し出す。
「キャラ変わってない?」
ツッコミを入れたのは、私ではなくルーセンだ。私は美生と恋人なったカサハがこういうタイプにシフトするのは知っているので、そこまで驚きはしなかった。……実際に目の当たりにした衝撃は別として。
「でもカロテだと、格好つかないね。カサハが苦手な野菜を、ミウに押し付けてるだけの構図に見えるよ」
「ルーセン……」
「え?」
ルーセンが少し意地悪い顔をして、茶々を入れる。美生の方は、目の前のカロテとカサハを交互に見る。カサハは……苦々しい顔でルーセンを睨んでいた。
そんなカサハに視点を定めた美生が、小さく笑う。それから彼女は、差し出されたカロテをパクリと食べた。
(甘いわー……さすが乙女ゲーム)
まあ確かにわかりやすい甘さという点では、カサハルートが一番そうだった。彼の場合、レテの村からイスタ邸に着くまでに気まずい期間があるせいか、その温度差がわかるシナリオになっている。
(そして一番、艶っぽいのよね)
『彩生世界』において、ナツメは塩対応だし、ルーセンは罪悪感から弱気だし。ロイくんは逆に恋愛上級者過ぎて、爽やかに愛を語ってしまう。想いが通じたらグイグイ押してくるという少女漫画的展開を誰よりやってくれるのは、間違いなくカサハだろう。
(美生とこうなっているということは、例のイベントが起きていたというわけで)
はたと思った瞬間には、もう一枚絵を思い浮かべてくれる優秀なゲーマー脳。ついでに回想モード機能も付いているらしく、台詞まで自動送りで流してくれる。
(うん。やっぱり美生と部屋を別にしていて正解だった……)
私は一人気まずい気持ちになって、自分の皿のハンバーグ(仮)を切り分ける行為に集中するふりをした。