『彩生世界』の聖女じゃないほう ~異世界召喚されました。こうなったらやってみせます完全攻略~
「編み籠は何かに使ったか使おうとしていて置き忘れたんでしょうけど、セネリアが境界線を作った理由って何なんでしょうか? そういう行動に出る人って、普通は何か要求があってそれを呑まなければ実行するってパターンだと思うんですけど……」
考え込む仕草のままに、ミウさんが口にする。
それから彼女は、再びルーセンさんの方へと向き直った。
「セネリアからはそういった要求というのは、無かったんですよね?」
「強いて言うなら、イスミナの場合は「神域に自分を入れろ」が要求かな。だから僕が思うに、多分セネリアは神に取って代わろうとしたんじゃないかと思う」
「神に取って代わる、ですか?」
「境界線による世界の遮断は、人間で言うなら四肢を切り落としているようなものだよ。そうしておいて、いよいよ心臓を刺しに神域に入って。それでもルシスを取り込むのは失敗したみたいだけどね」
「セネリアがルシスを殺した理由は、それですか」
俺は欠けた神殿の大鏡を思い出し、口を挟んだ。
ルシスの神体である大鏡は、セネリアが初めて世界の一部を闇に変えた時期から徐々にひび割れ始めた。そして彼女を神域に封印した頃には、とうとう一部が砕け散ってしまった……。
『ルシスが神域から去った』と表現されているが、『死んだ』では救いようがないからそうしたのだろう。それが多くの国民の見解だ。
「ん? ナツメ。いや、死んではいないよ。『去った』はそのまま、去ったんだよ。創造神ルシスと世界の名前が一緒なのは神への敬意とかそういうんじゃなくて、この世界が神そのものだからなんだ。神が死んでたら境界線だの魔獣だのの騒ぎどころか、今頃天変地異のオンパレードだよ」
例に漏れず、俺も『死んだ』という見解だった。
けれど、ルーセンさんが付け加えた「死んでいないことを示す理由」に、言われてみればとすぐに納得する。
「つまり言葉通り、神殿から出てどこかほっつき歩いてるということですか?」
「ナツメは神に対しても言い方がぶれないよね!」
「あの、ルシスの神域にセネリアが封印されているんですよね? 神様でも、自分を殺しに来た人間と一緒にはいたくないんじゃないでしょうか?」
「確かに何かの拍子に封印が解けて、寝首を掻かれるのは避けたいかもしれませんね」
ミウさんの意見にそう返しつつも、俺は彼女とは別の理由を考えていた。
ミウさんの考えも可能性が無いとは言い切れない。だが、神域が神の家だとすると、鼠が入り込んでその死体があるからといって、家を手放すだろうか。それよりも、「何かをしに出掛けた」可能性の方が高いのではないか。
(確か王族は、神の啓示を受け取れるという話……)
それなら神が真っ先に向かうとしたら、王都だろうか。人間なら自ら行動を起こすかもしれないが、神が何かをするつもりなら通常それをやらせる人間を探すだろう。意思の疎通ができる王族に直接やらせるか、あるいは彼らに条件に合致する人間を探させるか。おそらくそのどちらかの方法を取ると、考えられる。
「センシルカが解決したら、間を置かず王都に向かった方が良さそうだね」
既に意識が王都に向かいかけていたところを、ルーセンさんの一言で引き戻される。そうだ、まずはセンシルカの問題を解決しなくては。
ルーセンさんの意見に、皆が頷く。それを以て、この場は解散となった。
考え込む仕草のままに、ミウさんが口にする。
それから彼女は、再びルーセンさんの方へと向き直った。
「セネリアからはそういった要求というのは、無かったんですよね?」
「強いて言うなら、イスミナの場合は「神域に自分を入れろ」が要求かな。だから僕が思うに、多分セネリアは神に取って代わろうとしたんじゃないかと思う」
「神に取って代わる、ですか?」
「境界線による世界の遮断は、人間で言うなら四肢を切り落としているようなものだよ。そうしておいて、いよいよ心臓を刺しに神域に入って。それでもルシスを取り込むのは失敗したみたいだけどね」
「セネリアがルシスを殺した理由は、それですか」
俺は欠けた神殿の大鏡を思い出し、口を挟んだ。
ルシスの神体である大鏡は、セネリアが初めて世界の一部を闇に変えた時期から徐々にひび割れ始めた。そして彼女を神域に封印した頃には、とうとう一部が砕け散ってしまった……。
『ルシスが神域から去った』と表現されているが、『死んだ』では救いようがないからそうしたのだろう。それが多くの国民の見解だ。
「ん? ナツメ。いや、死んではいないよ。『去った』はそのまま、去ったんだよ。創造神ルシスと世界の名前が一緒なのは神への敬意とかそういうんじゃなくて、この世界が神そのものだからなんだ。神が死んでたら境界線だの魔獣だのの騒ぎどころか、今頃天変地異のオンパレードだよ」
例に漏れず、俺も『死んだ』という見解だった。
けれど、ルーセンさんが付け加えた「死んでいないことを示す理由」に、言われてみればとすぐに納得する。
「つまり言葉通り、神殿から出てどこかほっつき歩いてるということですか?」
「ナツメは神に対しても言い方がぶれないよね!」
「あの、ルシスの神域にセネリアが封印されているんですよね? 神様でも、自分を殺しに来た人間と一緒にはいたくないんじゃないでしょうか?」
「確かに何かの拍子に封印が解けて、寝首を掻かれるのは避けたいかもしれませんね」
ミウさんの意見にそう返しつつも、俺は彼女とは別の理由を考えていた。
ミウさんの考えも可能性が無いとは言い切れない。だが、神域が神の家だとすると、鼠が入り込んでその死体があるからといって、家を手放すだろうか。それよりも、「何かをしに出掛けた」可能性の方が高いのではないか。
(確か王族は、神の啓示を受け取れるという話……)
それなら神が真っ先に向かうとしたら、王都だろうか。人間なら自ら行動を起こすかもしれないが、神が何かをするつもりなら通常それをやらせる人間を探すだろう。意思の疎通ができる王族に直接やらせるか、あるいは彼らに条件に合致する人間を探させるか。おそらくそのどちらかの方法を取ると、考えられる。
「センシルカが解決したら、間を置かず王都に向かった方が良さそうだね」
既に意識が王都に向かいかけていたところを、ルーセンさんの一言で引き戻される。そうだ、まずはセンシルカの問題を解決しなくては。
ルーセンさんの意見に、皆が頷く。それを以て、この場は解散となった。