『彩生世界』の聖女じゃないほう ~異世界召喚されました。こうなったらやってみせます完全攻略~
「何だか、やたら細かい指示を出してきたね……確かにどう敵に当たるかを聞きたかったわけだけど、これは参考にするのが逆に難しいというか。どうする? カサハ」
ルーセンが片方の短剣の柄で肩を叩きながら、カサハを見る。
「……アヤコ、ミウにも指示を出しているのは何故だ?」
ルーセンに話を振られたカサハは、やや間を置いて私に尋ねた。
が、彼の質問の意味がわからず首を傾げる。「何故」と問われても、『彩生世界』はそう言うゲームだ。
「私を喚ぶ前に、美生が魔法に目覚めて一緒に戦います的な話の流れになってなかった?」
「そんなことまでわかるのか、予言者というのは。だが……」
「あっ」
言い淀み腕を組んだカサハに、ようやく私は彼の言いたいことを理解した。
(そうだ。カサハたちにとっては、美生はただのか弱い少女なんだ)
見るからにこれまで戦いとは無縁であっただろう少女。私はゲームとして見ていたから、無意識で頭数に入れていた。けれどその前提が無ければ、確かに彼女を戦わせることに対し躊躇いを覚える。
(でも美生も戦わないと私の知ってる勝利パターンにならない。どうすれば……)
『彩生世界』の戦闘パートは小規模な戦略シミュレーション。一度に出現する敵は少ないが、プレイヤー側が操作出来るキャラも基本的に目の前にいる四人のメインキャラのみになる。
物理攻撃と防御の高いカサハ、機動と回避が高いルーセン、魔法で遠距離攻撃の美生、そして回復担当のナツメ。それぞれ異なった役割を持つ為、代えが利かない。
それに何より『彩生世界』のシステムが一番の問題だ。『彩生世界』は実は詰め将棋とも言えるシステムを採用している。何ターン目に何の行動を取ったか、その結果はゲームを周回プレイしても毎回同じものになる。一ターン目からステージクリアまで、手順を覚えてさえいれば、必ず勝てる仕様なのだ。
(一度見てくれたなら、『予言』の実用性をわかってくれるとは思うんだけど……)
その一度をどうやって見てもらうか。
カサハの視線を感じる。彼は美生を含まない作戦でないと、聞き入れてくれないかもしれない。
けれど、私はそんな特殊なプレイスタイルを試したことは無いし、何よりラストまで約束された勝利を自ら手放すことなんて考えられない。でも、どう説明したら――
「――俺は、アヤコさんの作戦を、それこそ一度鵜呑みにしてみてはどうかと思います」
不意に、ナツメが沈黙を破る。私を含め、その場にいた全員が彼の方を見た。
「幸い、もし駄目でも体勢を立て直せる程度の敵です。予言の力を試すのも悪くないかと。その予言が有効であるなら、延いてはそれがミウさんの安全にも繋がるのではないでしょうか」
「わ、私も彩子さんを信じてみたいと思います! 私が異空間で見た彩子さんも、さっきのように細かい指示を言ってました。そしてそれがピタリと当て嵌まっていたんです」
美生がナツメに賛同し、ややあってルーセンが「そうだね」と頷く。
「折角、ナツメに喚んでもらったことだしね」
「……わかった」
当人である美生にまで賛成されては、そう答えるしかなかったのだろう。カサハからも渋々といった感じではあったが、了承の返事をもらえた。
ルーセンが片方の短剣の柄で肩を叩きながら、カサハを見る。
「……アヤコ、ミウにも指示を出しているのは何故だ?」
ルーセンに話を振られたカサハは、やや間を置いて私に尋ねた。
が、彼の質問の意味がわからず首を傾げる。「何故」と問われても、『彩生世界』はそう言うゲームだ。
「私を喚ぶ前に、美生が魔法に目覚めて一緒に戦います的な話の流れになってなかった?」
「そんなことまでわかるのか、予言者というのは。だが……」
「あっ」
言い淀み腕を組んだカサハに、ようやく私は彼の言いたいことを理解した。
(そうだ。カサハたちにとっては、美生はただのか弱い少女なんだ)
見るからにこれまで戦いとは無縁であっただろう少女。私はゲームとして見ていたから、無意識で頭数に入れていた。けれどその前提が無ければ、確かに彼女を戦わせることに対し躊躇いを覚える。
(でも美生も戦わないと私の知ってる勝利パターンにならない。どうすれば……)
『彩生世界』の戦闘パートは小規模な戦略シミュレーション。一度に出現する敵は少ないが、プレイヤー側が操作出来るキャラも基本的に目の前にいる四人のメインキャラのみになる。
物理攻撃と防御の高いカサハ、機動と回避が高いルーセン、魔法で遠距離攻撃の美生、そして回復担当のナツメ。それぞれ異なった役割を持つ為、代えが利かない。
それに何より『彩生世界』のシステムが一番の問題だ。『彩生世界』は実は詰め将棋とも言えるシステムを採用している。何ターン目に何の行動を取ったか、その結果はゲームを周回プレイしても毎回同じものになる。一ターン目からステージクリアまで、手順を覚えてさえいれば、必ず勝てる仕様なのだ。
(一度見てくれたなら、『予言』の実用性をわかってくれるとは思うんだけど……)
その一度をどうやって見てもらうか。
カサハの視線を感じる。彼は美生を含まない作戦でないと、聞き入れてくれないかもしれない。
けれど、私はそんな特殊なプレイスタイルを試したことは無いし、何よりラストまで約束された勝利を自ら手放すことなんて考えられない。でも、どう説明したら――
「――俺は、アヤコさんの作戦を、それこそ一度鵜呑みにしてみてはどうかと思います」
不意に、ナツメが沈黙を破る。私を含め、その場にいた全員が彼の方を見た。
「幸い、もし駄目でも体勢を立て直せる程度の敵です。予言の力を試すのも悪くないかと。その予言が有効であるなら、延いてはそれがミウさんの安全にも繋がるのではないでしょうか」
「わ、私も彩子さんを信じてみたいと思います! 私が異空間で見た彩子さんも、さっきのように細かい指示を言ってました。そしてそれがピタリと当て嵌まっていたんです」
美生がナツメに賛同し、ややあってルーセンが「そうだね」と頷く。
「折角、ナツメに喚んでもらったことだしね」
「……わかった」
当人である美生にまで賛成されては、そう答えるしかなかったのだろう。カサハからも渋々といった感じではあったが、了承の返事をもらえた。