『彩生世界』の聖女じゃないほう ~異世界召喚されました。こうなったらやってみせます完全攻略~
「うーん、でもそうなるとどうやって尾行しよう?」
「尾行ですか?」
「そう、美生とカサハを尾行する必要があるのよ」
センシルカでの買い出しデートイベントは、幾つかの選択肢が発生する。すべて成功判定なら、ひとまず個別ルートに入ることができる。よって、こっそり後をつけてフラグが立つかどうかを確認しなければならない。
「例によって、親密さで未来が変わるからですか?」
「大正解」
相変わらず鋭いナツメに、私は頷いてみせた。
「事情はわかりましたが、彼らを尾行するのは難しくありませんか? ミウさんはともかく、カサハさんには三分と経たないうちに気付かれると思いますよ」
「え? あ……そういえばカサハって、要人の護衛が本職のキャラだった……」
カサハのエピソードの一つに、一度の葉擦れの音で正確に相手の位置を割り出すという場面がある。そんな彼相手に尾行というのは、ナツメの指摘通り無理がありそうだ。
かといって、尾行しないわけにもいかない。何せ、イベントが起きるタイミングは美生とカサハだけで行動しているとき。他のメンバーもいるグループ行動になってしまうと、状況が変わってしまって恐らく発生しない。
「困ったわね……」
「……つまり、ようは彼らが二人きりで、かつアヤコさんが二人の様子を見られる距離にいたいわけですよね?」
「そう、それ。……うーん」
端的に述べたナツメに同意しつつも、そう聞くとそんな都合の良い状況を作れるものなのか。まさか完璧に思えた自分の作戦に、こんな落とし穴があろうとは……。
「それなら、アヤコさんは俺の恋人として俺とデートしましょう」
「は?」
真面目に頭を悩ませていたところ、唐突に来た妙な提案。私はナツメに、間の抜けた声で返してしまった。
「デートだと二人に言っておけば、俺とアヤコさんが彼らと同じ通りを歩いていても不自然ではなくなります。買い出しもデートも店を見て回るものですからね」
けれど続けられた彼の説明に、「なるほど」とつい納得させられる。
「俺は、初日に一人で行動しないようにと忠告したにも拘わらず一人で出掛けようとしていた誰かさんの様子がわかればいいので、お互いの目的にも適います」
「うっ、悪かったわよ。けど、確かにそれならいるのがわかってもカサハも気に留めないわね。ナツメのその提案に乗るわ」
「では見失わないうちに、カサハさんたちと一旦合流しましょう」
「あ、二人は広場の露店を見てると思うわ」
「わかりました」
「わっ」
扉を開けようとした手を、突然にナツメに取られる。私は思わず彼を見た。
「貴女は今から俺の恋人ですよ」
直後、ナツメにそう返された。そういう趣向なわけか。
カサハに対するカムフラージュもさることながら、ナツメならこちらの事情も理解している。何とも頼もしい協力者だ。
「そうね。それじゃあ今日は一つよろしく!」
私は笑顔で答え、彼の手を握り返した。
「尾行ですか?」
「そう、美生とカサハを尾行する必要があるのよ」
センシルカでの買い出しデートイベントは、幾つかの選択肢が発生する。すべて成功判定なら、ひとまず個別ルートに入ることができる。よって、こっそり後をつけてフラグが立つかどうかを確認しなければならない。
「例によって、親密さで未来が変わるからですか?」
「大正解」
相変わらず鋭いナツメに、私は頷いてみせた。
「事情はわかりましたが、彼らを尾行するのは難しくありませんか? ミウさんはともかく、カサハさんには三分と経たないうちに気付かれると思いますよ」
「え? あ……そういえばカサハって、要人の護衛が本職のキャラだった……」
カサハのエピソードの一つに、一度の葉擦れの音で正確に相手の位置を割り出すという場面がある。そんな彼相手に尾行というのは、ナツメの指摘通り無理がありそうだ。
かといって、尾行しないわけにもいかない。何せ、イベントが起きるタイミングは美生とカサハだけで行動しているとき。他のメンバーもいるグループ行動になってしまうと、状況が変わってしまって恐らく発生しない。
「困ったわね……」
「……つまり、ようは彼らが二人きりで、かつアヤコさんが二人の様子を見られる距離にいたいわけですよね?」
「そう、それ。……うーん」
端的に述べたナツメに同意しつつも、そう聞くとそんな都合の良い状況を作れるものなのか。まさか完璧に思えた自分の作戦に、こんな落とし穴があろうとは……。
「それなら、アヤコさんは俺の恋人として俺とデートしましょう」
「は?」
真面目に頭を悩ませていたところ、唐突に来た妙な提案。私はナツメに、間の抜けた声で返してしまった。
「デートだと二人に言っておけば、俺とアヤコさんが彼らと同じ通りを歩いていても不自然ではなくなります。買い出しもデートも店を見て回るものですからね」
けれど続けられた彼の説明に、「なるほど」とつい納得させられる。
「俺は、初日に一人で行動しないようにと忠告したにも拘わらず一人で出掛けようとしていた誰かさんの様子がわかればいいので、お互いの目的にも適います」
「うっ、悪かったわよ。けど、確かにそれならいるのがわかってもカサハも気に留めないわね。ナツメのその提案に乗るわ」
「では見失わないうちに、カサハさんたちと一旦合流しましょう」
「あ、二人は広場の露店を見てると思うわ」
「わかりました」
「わっ」
扉を開けようとした手を、突然にナツメに取られる。私は思わず彼を見た。
「貴女は今から俺の恋人ですよ」
直後、ナツメにそう返された。そういう趣向なわけか。
カサハに対するカムフラージュもさることながら、ナツメならこちらの事情も理解している。何とも頼もしい協力者だ。
「そうね。それじゃあ今日は一つよろしく!」
私は笑顔で答え、彼の手を握り返した。