『彩生世界』の聖女じゃないほう ~異世界召喚されました。こうなったらやってみせます完全攻略~
「うん。いやー、これは気付かないよね。何というか、イスミナやセンシルカの逆? イスミナとセンシルカは在るものを無いように見せていた。で、今度は無いものを在るように見せているみたいだね。そこはさ、無いんだよ。本当は」
見えない境界線を見ようとしているのか、ルーセンがその場で背伸びをしたり屈んだりする。次いで彼は、「参った参った」といった感じで頭を掻いた。
「本当は崖とは違う地形ということか?」
「地形どころの話じゃないね。無い、本当に無い。この一帯は、もう随分昔にルシスの果てに侵食されて存在しない土地のはずなんだ。セネリアの境界線によって僕たちは、違和感のない景色を見せられているっぽい。それこそミウがうっかり踏み入れてしまうくらいのね。ルシスの果てならマナが少ない――というか無いから境界線の条件にも当て嵌まるわけだ」
「果てだと? あれは、触れたものすべてを消滅させるという話だぞ。こんな王都の近郊にそんなものがあるというのか?」
「目にしている光景は過去のもの」の次は、「本来ならそこにあるのはルシスの果て」。ルーセンの言葉に、カサハが困惑した声音で彼に問う。
「幸いここのは小規模だけどね。――王都の近くに出来た、ルシスの果て。誰もがカサハと同じように、恐れ戦いたはずだよね。だから僕は今、セネリアが境界線を作った元々の目的はルシスの果ての補修だったんじゃないかと考えてる」
頭にやっていた手を今度は顎に当てながら、ルーセンはカサハに答えた。
「どういうことだ?」
「順番的に、セネリアが王都に境界線を作ったのはイスミナやセンシルカより前になるんだ。つまり、セネリアが本当にやりたかったことは、もしかしたらルシスの果ての補修なのかもって」
「俺はそうは思えない。見えなければ今回のミウのように、知らずに触れる危険があるだろう」
「そうだね。でも境界線は、果てのように一瞬にして命を奪うわけじゃない。それに境界線は魔獣のように、マナを抜く対象は人間に限られてる。危害があるのは、人間にだけ。だったら隠しておくメリットの方が断然大きいんだ。果てはマナが少なくなると拡大する。果てがあることでその土地から人が離れたら、ますます果ては拡大する。悪循環を断ち切るために、知らないまま人にその土地に住んでもらうのは、非常に有効な手段になるわけ」
「だが、魔獣の被害が酷くなれば、結局は土地を放棄ということになるのでは?」
「! 編み籠……」
なおもカサハは食い下がり、しかし突然に美生が声を上げたことで彼はルーセンから彼女へと目を移した。美生もまた、カサハを見上げる。
「編み籠とは?」
「イスミナ周辺を調査したときに、ルーセンさんが言ってた例えです。人間が作った編み籠に、勝手に鳥が巣を作ったっていう」
美生の返答に、カサハが過去の記憶を辿る素振りを見せる。
「――そうか、その鳥が魔獣ということか。セネリアは境界線が魔獣の住処になることに気付き、その後はその習性を悪用した」
そして彼は至った結論に、見えない境界線を睨み付けた。
(ん、美生が動いた)
境界線を少し遠目に見ようとしたのか、美生が私が思う位置に近い場所まで移動する。
(後はカサハとルーセンの位置ね)
私は目で追っていた美生が立ち止まったところで、彼女から対峙する二人へとまた注意を戻した。
見えない境界線を見ようとしているのか、ルーセンがその場で背伸びをしたり屈んだりする。次いで彼は、「参った参った」といった感じで頭を掻いた。
「本当は崖とは違う地形ということか?」
「地形どころの話じゃないね。無い、本当に無い。この一帯は、もう随分昔にルシスの果てに侵食されて存在しない土地のはずなんだ。セネリアの境界線によって僕たちは、違和感のない景色を見せられているっぽい。それこそミウがうっかり踏み入れてしまうくらいのね。ルシスの果てならマナが少ない――というか無いから境界線の条件にも当て嵌まるわけだ」
「果てだと? あれは、触れたものすべてを消滅させるという話だぞ。こんな王都の近郊にそんなものがあるというのか?」
「目にしている光景は過去のもの」の次は、「本来ならそこにあるのはルシスの果て」。ルーセンの言葉に、カサハが困惑した声音で彼に問う。
「幸いここのは小規模だけどね。――王都の近くに出来た、ルシスの果て。誰もがカサハと同じように、恐れ戦いたはずだよね。だから僕は今、セネリアが境界線を作った元々の目的はルシスの果ての補修だったんじゃないかと考えてる」
頭にやっていた手を今度は顎に当てながら、ルーセンはカサハに答えた。
「どういうことだ?」
「順番的に、セネリアが王都に境界線を作ったのはイスミナやセンシルカより前になるんだ。つまり、セネリアが本当にやりたかったことは、もしかしたらルシスの果ての補修なのかもって」
「俺はそうは思えない。見えなければ今回のミウのように、知らずに触れる危険があるだろう」
「そうだね。でも境界線は、果てのように一瞬にして命を奪うわけじゃない。それに境界線は魔獣のように、マナを抜く対象は人間に限られてる。危害があるのは、人間にだけ。だったら隠しておくメリットの方が断然大きいんだ。果てはマナが少なくなると拡大する。果てがあることでその土地から人が離れたら、ますます果ては拡大する。悪循環を断ち切るために、知らないまま人にその土地に住んでもらうのは、非常に有効な手段になるわけ」
「だが、魔獣の被害が酷くなれば、結局は土地を放棄ということになるのでは?」
「! 編み籠……」
なおもカサハは食い下がり、しかし突然に美生が声を上げたことで彼はルーセンから彼女へと目を移した。美生もまた、カサハを見上げる。
「編み籠とは?」
「イスミナ周辺を調査したときに、ルーセンさんが言ってた例えです。人間が作った編み籠に、勝手に鳥が巣を作ったっていう」
美生の返答に、カサハが過去の記憶を辿る素振りを見せる。
「――そうか、その鳥が魔獣ということか。セネリアは境界線が魔獣の住処になることに気付き、その後はその習性を悪用した」
そして彼は至った結論に、見えない境界線を睨み付けた。
(ん、美生が動いた)
境界線を少し遠目に見ようとしたのか、美生が私が思う位置に近い場所まで移動する。
(後はカサハとルーセンの位置ね)
私は目で追っていた美生が立ち止まったところで、彼女から対峙する二人へとまた注意を戻した。