『彩生世界』の聖女じゃないほう ~異世界召喚されました。こうなったらやってみせます完全攻略~
(ん? 『世界の記憶』……?)
ふと、私はふといつだったかルーセンとした遣り取りを思い出した。
召喚される人間の条件は、そのときにも思ったが私にも当て嵌まっていた。セネリアが言った本当の条件――『レテの村が滅んだ記憶を持つ』ことにおいて。
(あのときには、そういえば当て嵌まるなくらいにしか思ってなかったけど……)
美生はこの後、ルシスか元の世界どちらかの記憶を捧げる選択をすることになる。『世界の記憶』を二つ持つ彼女は片方の記憶を失っても、ルシスとの繋がりが断たれない。よって、廃人にならずに済むという点においても、美生はこの計画の適任者だった。
でも、より正確に言えば必要なのは『世界の記憶』を二つ持つ人間。片方を手放しても生きて行ける人間ということになる。
(それなら、私が美生の代わりに記憶を捧げることもできるんじゃ?)
私がルシスの記憶を捧げれば、それを一つしか持たない私はこの世界では廃人になるだろう。けれどその後で元の世界に送り返してもらえれば、向こうでは何の問題もなく元の生活に戻れるのでは。美生とは違い、私の世界はルーセンが創った世界ではないのだから。
『彩生世界』でロイくんのプロポーズが胸に響いたのは、彼が「僕があなたの世界に行きます」と、美生が家族を失わないで済む道を提示してくれたからかもしれない。
私はずっと、心の何処かに引っ掛かりを覚えていた。エピローグで幸せそうに笑う美生を見ながら、ずっと。オープニングで垣間見た、彼女が愛する元の世界の光景が頭から離れなかった。
(私がここに来た意味は、きっとこれなんだ……)
思い至った可能性に、ドクンドクンと胸が早鐘を打つ。
私は片手で胸を押さえ、もう片手で緊張に渇きを覚えた喉を押さえた。
「イスミナとセンシルカに闇を映したのは、周囲の人々の記憶から消させないためです。闇を目にする度に、人々はそこに在ったものを思い出します。それによって、再びマナを巡らせたときに在ったものは変わらず蘇る。レテの村のようには、ならず、に――」
不意に、セネリアの身体がぐらりと揺らぐ。
そして『最期』を思わせる眼差しでレテの村を見た彼女は、その場に崩れ落ちた。
「! ミウ!」
セネリアを呆然として見ていたカサハが、遅れて我に返り美生の横に跪く。
「『ルシスを助けて、私』。セネリアはずっと私に、そう訴えていたんです」
顔を上げないままに美生が、彩生の度に聞こえていた『声』を告白する。
美生に伸ばされようとしていたカサハの手は、彼女へは触れないままに静かに引かれた。
ふと、私はふといつだったかルーセンとした遣り取りを思い出した。
召喚される人間の条件は、そのときにも思ったが私にも当て嵌まっていた。セネリアが言った本当の条件――『レテの村が滅んだ記憶を持つ』ことにおいて。
(あのときには、そういえば当て嵌まるなくらいにしか思ってなかったけど……)
美生はこの後、ルシスか元の世界どちらかの記憶を捧げる選択をすることになる。『世界の記憶』を二つ持つ彼女は片方の記憶を失っても、ルシスとの繋がりが断たれない。よって、廃人にならずに済むという点においても、美生はこの計画の適任者だった。
でも、より正確に言えば必要なのは『世界の記憶』を二つ持つ人間。片方を手放しても生きて行ける人間ということになる。
(それなら、私が美生の代わりに記憶を捧げることもできるんじゃ?)
私がルシスの記憶を捧げれば、それを一つしか持たない私はこの世界では廃人になるだろう。けれどその後で元の世界に送り返してもらえれば、向こうでは何の問題もなく元の生活に戻れるのでは。美生とは違い、私の世界はルーセンが創った世界ではないのだから。
『彩生世界』でロイくんのプロポーズが胸に響いたのは、彼が「僕があなたの世界に行きます」と、美生が家族を失わないで済む道を提示してくれたからかもしれない。
私はずっと、心の何処かに引っ掛かりを覚えていた。エピローグで幸せそうに笑う美生を見ながら、ずっと。オープニングで垣間見た、彼女が愛する元の世界の光景が頭から離れなかった。
(私がここに来た意味は、きっとこれなんだ……)
思い至った可能性に、ドクンドクンと胸が早鐘を打つ。
私は片手で胸を押さえ、もう片手で緊張に渇きを覚えた喉を押さえた。
「イスミナとセンシルカに闇を映したのは、周囲の人々の記憶から消させないためです。闇を目にする度に、人々はそこに在ったものを思い出します。それによって、再びマナを巡らせたときに在ったものは変わらず蘇る。レテの村のようには、ならず、に――」
不意に、セネリアの身体がぐらりと揺らぐ。
そして『最期』を思わせる眼差しでレテの村を見た彼女は、その場に崩れ落ちた。
「! ミウ!」
セネリアを呆然として見ていたカサハが、遅れて我に返り美生の横に跪く。
「『ルシスを助けて、私』。セネリアはずっと私に、そう訴えていたんです」
顔を上げないままに美生が、彩生の度に聞こえていた『声』を告白する。
美生に伸ばされようとしていたカサハの手は、彼女へは触れないままに静かに引かれた。