レンズのむこう
目が点、とはまさにこの事ではないのか。というくらい今の私は驚愕してると思う。



とりあえず平井先生の「この上ない間抜け面だな」というほめ言葉を無視して、投げつけられたプリントを見てみると


「数学の問題集…?」


全く意味が分からないといったふうな顔をすると平井先生は涼しげにまたコーヒーをすすって


「来週までに提出だ。それで授業妨害や成績の低さには目をつぶってやる」


今回はな。と念をおすともう話は終わったとゆうように手をヒラヒラとさせて飲み終わったカップをテーブルにおいた。


「話ってこれだけ?」


私が不安そうに問えば、平井先生は意味ありげに微笑む。


「まぁ俺にはお前とあの事に関して話しあう権限がある。」

しかし、と続けて平井先生は私を真っ直ぐにみつめた。


「俺は兄貴達と違ってお前に決断を急がせることもしねぇし。ましてや無理強いすることもしない。」


「えっ…」


「それに、お前は昔から馬鹿だが自分なりの考えはしっかり持ってた奴だ。いきなり一人暮らししたいなんて突飛な事も自分なりに考えあってのことだろうからな」


「きょっ…京にぃ…」


感激で言葉がでてこない。
あの鬼畜唯我独尊男の京にぃからこんな言葉がでてくるなんて!!


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