政略結婚だった二人
「私は最初、潜って探そうとしましたの。そうしましたら、おじいちゃまが……」
「──それだ、それ! そもそも、俺が注意したかったのは!」
「それ?」
「その〝おじいちゃま〟という呼び方……いかがなものかと思う。古参の魔族の中には戸惑う者も少なくない。姫も重々承知しているだろうが──あの方は、魔王様だぞ」
ローエンの主君である魔王陛下は、プルプルしているおじいちゃんである。
間もなく千歳を迎えるご長寿のため、腰なんて直角に曲がってしまっている。
アメリ姫との縁談はもともと、この魔王との間で持ち上がったものだった。
にもかかわらず、その家臣であるローエンの妻となった姫は言う。
「ですが、ローエン。私とお話する時の魔王様の一人称は、〝おじいちゃま〟なんですよ?」
「魔王様は、魑魅魍魎が跋扈するこの魔界を統べるお方だ。曲者揃いの魔族どもを従えるには、それ相応の威厳が必要で……」
「それに、〝おじいちゃま〟と呼んでほしいと、可愛らしくおねだりなさるんですもの。叶えて差し上げたいわ」
「か、可愛らしくおねだり……魔王様、が……」
頭を抱える魔王の副官を、人間の姫はニコニコして見上げていた。
「──それだ、それ! そもそも、俺が注意したかったのは!」
「それ?」
「その〝おじいちゃま〟という呼び方……いかがなものかと思う。古参の魔族の中には戸惑う者も少なくない。姫も重々承知しているだろうが──あの方は、魔王様だぞ」
ローエンの主君である魔王陛下は、プルプルしているおじいちゃんである。
間もなく千歳を迎えるご長寿のため、腰なんて直角に曲がってしまっている。
アメリ姫との縁談はもともと、この魔王との間で持ち上がったものだった。
にもかかわらず、その家臣であるローエンの妻となった姫は言う。
「ですが、ローエン。私とお話する時の魔王様の一人称は、〝おじいちゃま〟なんですよ?」
「魔王様は、魑魅魍魎が跋扈するこの魔界を統べるお方だ。曲者揃いの魔族どもを従えるには、それ相応の威厳が必要で……」
「それに、〝おじいちゃま〟と呼んでほしいと、可愛らしくおねだりなさるんですもの。叶えて差し上げたいわ」
「か、可愛らしくおねだり……魔王様、が……」
頭を抱える魔王の副官を、人間の姫はニコニコして見上げていた。