政略結婚だった二人
「ふふ……ローエンの方がかわいいです」
「うぐっ……」
とどめとばかりに、華奢な両腕が背中に回ってきて、ローエンの胸の奥では心臓が大きく跳ねる。
彼は、力一杯抱き締めたい衝動に駆られた。
けれど、なけなしの理性が働いて踏みとどまる。
ローエンは細心の注意を払い、そっと包み込むようにアメリを抱き返した。
彼女が少しでも損なわれるのは、恐ろしくてならなかったのだ。
「できることならあなたを真綿で包んで、俺の懐にずっとしまっておきたい……」
「ローエンまで、お兄様やお姉様達みたいなことをおっしゃらないで」
「兄上や姉上方の気持ちが痛いほどわかる。姫が……アメリが大切だったんだ」
「存じておりますわ。もちろん、感謝もしておりましたけれど……」
ローエンの腕の中で、アメリが幼子のように唇を尖らせる。
兄王子や姉王女達はか弱い末妹を大切に思うあまり、自分達が認めたものしかその側に置かせなかった。
食べ物も飲み物も、ドレスもアクセサリーも、私室の調度も侍女も……友達でさえ。
本人の意思など確認せぬまま彼らが選んだそれらを、本心からは好きにはなれなかった、とアメリは言う。
それを聞いたローエンは、思わず自嘲した。
「うぐっ……」
とどめとばかりに、華奢な両腕が背中に回ってきて、ローエンの胸の奥では心臓が大きく跳ねる。
彼は、力一杯抱き締めたい衝動に駆られた。
けれど、なけなしの理性が働いて踏みとどまる。
ローエンは細心の注意を払い、そっと包み込むようにアメリを抱き返した。
彼女が少しでも損なわれるのは、恐ろしくてならなかったのだ。
「できることならあなたを真綿で包んで、俺の懐にずっとしまっておきたい……」
「ローエンまで、お兄様やお姉様達みたいなことをおっしゃらないで」
「兄上や姉上方の気持ちが痛いほどわかる。姫が……アメリが大切だったんだ」
「存じておりますわ。もちろん、感謝もしておりましたけれど……」
ローエンの腕の中で、アメリが幼子のように唇を尖らせる。
兄王子や姉王女達はか弱い末妹を大切に思うあまり、自分達が認めたものしかその側に置かせなかった。
食べ物も飲み物も、ドレスもアクセサリーも、私室の調度も侍女も……友達でさえ。
本人の意思など確認せぬまま彼らが選んだそれらを、本心からは好きにはなれなかった、とアメリは言う。
それを聞いたローエンは、思わず自嘲した。