遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 今回も結ばれることはなかったけれど、じれじれする展開も嫌いではない。

 幸せな気持ちでベッドに入り、お行儀悪いとは分かっているけれど、寝転がったままもう一度コミックスに手を伸ばす。そして、眠った。

 朝、スマートフォンを確認すると、鷹條からのメッセージが入っている。

『昨日は楽しんだ? すごく楽しみにしていた様子が伝わってきていたから、楽しめたらいいなと思ったよ』

 返信の時間は亜由美がすっかり眠ってしまっている真夜中だった。

 警護の仕事というのは対象者に側でピッタリ張り付くだけのものではないのだそうだ。

 あらかじめ決められている行先予定の場所をチェックしたり、事前の打ち合わせや事後のミーティングなどもかなり重要なことらしい。

 もともと鷹條からは一旦警護の業務に入るとかなり忙しいとは聞いていたので、こうやって隙間の時間にも連絡をくれること自体が本当に亜由美への気づかいだと分かる。

 この日帰ってきた亜由美はいつものように、ポストの中に入っていた手紙類をダイニングテーブルの上に置いた。

 パラっと広がったその中の封筒が妙に気になる。
 なんでもない封筒なのにやけに存在感があるのだ。なぜだろうか?

 亜由美は気になったその封筒を手に取った。気になった理由が分かる。住所が記載されていないのだ。そして宛名だけが印刷されている。
『杉原 亜由美様』
< 100 / 216 >

この作品をシェア

pagetop