遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 不審に思いつつも封筒にはさみを入れた。中から出てきたのは亜由美の写真だ。コンビニで買い物をしているものや、先日書店で本を買った時のものもあった。

 ──イタズラ……?

 封筒の住所の記載がないということは差出人がポストへ直接投函したものだということだ。
 そのことに気づいて亜由美は少し怖くなる。

 一体誰が?
 心当たりが全くない。

 気持ち悪いことも確かだ。けれど、どうしたらいいのかも分からない。過剰に反応するものどうかという気がして、写真を封筒に戻し一瞬捨てようかと少し迷ったけれど、請求書などと一緒にまとめておいた。


「少し、遅くなっちゃったわね?」
 隣の席の奥村に話しかけられて、パソコン画面に集中していた亜由美は手を止め時計を確認する。

「あ……そうですね」
 気づいたら定時を過ぎていた。

「杉原さん、今日はあの素敵な彼と待ち合わせとかしてない?」
「今、出張中なんです」

「あら、じゃあ一緒に食事でもどう?」
「いいんですか? ぜひ、お願いします!」

 ランチで一緒に食事に行くことはあっても、業務の終了後に声を掛けられることはあまりない。

 亜由美にとって奥村は尊敬する大好きな先輩で、可愛らしく憧れでもある。
 嬉しくて、ぜひと即答してしまった。

 一瞬、図々しかったかな? と思ったが、奥村もにこにこして「どこに行こうかなー」などと言っているので亜由美は安心する。
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