遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 翌日、定時に終わった鷹條と亜由美は駅で待ち合わせをする。
 駅に直結しているスーパーマーケットに寄り、二人で買い物をすることにした。

 明日は亜由美も休みで、鷹條も休みなのだ。
 亜由美は自分のマンションで鷹條にもゆっくりしてもらいたかった。

「なにか食べたいものはある?」
 こういう時、何でもいいとか言わないのが鷹條だ。
「亜由美のハンバーグ食べたい」
「分かった。ハンバーグね」

 亜由美は材料を適当にカートの中に放り込む。亜由美のハンバーグはあめ色に炒めた玉ねぎと多めにまぜる豆腐がポイントだ。

 ふわふわな食感で甘みがあって美味しいと家族には好評だった。少し前に作った時、鷹條もとても喜んでくれていたことを思い出す。

「で、大丈夫だったか? どこかで転倒したり絡まれたりはなかったな?」
「ないですってば」

 買い物をしながらするのはそんな会話だ。
 肩を並べて仲良く買い物をする超絶美形カップルは微笑ましい。そんな会話が交わされているとは他からは分からないだろう。

 亜由美が反論できないと分かっていてからかっているのか本気なのか、鷹條の表情からは分からない。
(千智さんはなんだか本気な気がする)

 鷹條の心配は甘やかされているようにも、大事にされているようにも亜由美は感じて嬉しいものだった。
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