遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 素敵に年を重ねたいとは思う。
 けれど、亜由美は年齢より上に見られることにコンプレックスを持っていた。

「でも顔は悪くないじゃん。スタイルもいいし」
「ダメだろ。融通効かなくて可愛げがない」

 その言葉を聞いて(知ってたもん)と亜由美はきびすを返した。

 本当は何か飲み物を買いたかったけれど、それ以上そこにいて自分がディスられているのを聞いていることはつらくて、我慢ができなかった。

 ──どうしてあんな風に言われてしまうんだろう?

 融通が利かないことは自分でも分かっている。本当に真面目な性格なのだ。
 それはずっとそうだった。

 総務部のある部屋に戻りながら亜由美は先日振られてしまった、初めてできた彼氏のことを思いだす。

「終わりにしよう」
 デートの終わりに彼が発したのがその言葉だった。


 彼とは他の会社との異業種交流会の打ち上げの席で出会った。
 亜由美が細やかに気配りをする姿を見ていて、声をかけてくれたのだ。

「そんなに気つかわなくていいよ。もっと楽にしたら?」
 開けっ広げな笑顔が素敵だった。

 コンサルティング会社で営業として仕事をしているという男性で、その会ではとても目立っていた。

 爽やかな笑顔と整った顔立ち。コンサルティング会社勤務といかにもエリートな雰囲気に、女性から熱い視線を送られ続けていた人だ。

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