遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 唇を亜由美の首や胸に落としながら、鷹條は指先で頬や顎をくすぐるように撫でる。その優しい仕草に亜由美はそっと頬を擦りよせた。

「挿れて……いいか?」
 こくっと亜由美は頷く。
「余裕なくて、ごめん……」
 その切羽詰まったような声に亜由美は胸も、それから別のところまで切なくなる。

 ゆるゆると蜜口の入り口を熱くなった杭が触れる。欲しくて、つい下肢を擦りつけてしまった。
「欲しいの?」
「ん……」

 蕩けそうな表情で鷹條を見つめる瞳にごくっと喉を鳴らした音が大きく聞こえて、亜由美の胸がますます鼓動を大きく響かせる。自分だけが欲しがっているんじゃないと分かるからだ。
 濡れた音をさせる狭間を分け入って熱杭で奥に穿たれる。

「……あぁっ!」
 びくびくっと腰が自然に跳ねてしまう。そして圧迫感と共に亜由美が感じたのは鷹條が中にいるという安心感だった。

 貫くときも鷹條は亜由美の身体をしっかりと抱きしめてくれていた。後に続く律動も、包み込まれるような気持ちよさの中で亜由美は達していた。

  * * *
  
 窓から朝の光が部屋の中に降り注いでいる。
「まだ、眠い?」

 ベッドの中で亜由美を見つめる鷹條はとびきり甘い。こんなに素敵な人が自分の彼氏だなんて戸惑ってしまう。
 亜由美は鷹條をじっと見つめた。

「ん? どうした?」
「こんなに素敵な人が彼氏なんだなぁって……」
 ふっと鷹條は微笑んで亜由美の頭を撫でた。
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