遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 夜から朝までの間に郵便物が配達されることは考えづらい。少し雑な放り込まれ方をされているのも気になった。

 鷹條は嫌な予感がして、その封筒にあまり触れないように角の部分をそっとつまんで封筒を取り出す。

 封筒の表面には住所の記載がなく
『杉原 亜由美様』
 とだけ印刷されていた。端正な鷹條の眉がすうっと寄った。

 鷹條は口元を引き結ぶ。
「初めてか?」
 真っ青な顔色の亜由美は首を横に振る。

「前にも来ていたんだな」
 気づけなかったことに鷹條は歯噛みしたいような思いだった。

 ◇◇◇

(コーヒーにミルクが欲しいな)

 亜由美は近くのコンビニエンスストアに買い物に行くことにする。
 買い物を終えマンションに戻って部屋に入ろうかと思ったが、そろそろ鷹條が帰ってくる頃だろう。

 カギがいつものように自宅ドアのポストに入っていたので、オートロックを開けるのなら待っていて一緒に戻ろうと思ったのだ。

 きっと亜由美が待っているのを見たら喜ぶ。
 そんな気持ちで少しわくわくしながら待っていた。

 部屋に入っていればいいのにとか言いながらも嬉しそうな鷹條の顔が見たかった。

 それはひどく目を引いた。
(あ……れ?)
 集合ポストからはみ出ていた封筒だった。亜由美の部屋のポストだと気づく。

 その瞬間顔から血の気が引いたように思った。
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