遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 以前に投函されていたものと同じものではないのだろうか?
 そう思うと亜由美は動けなくなる。

 その時マンションの前に鷹條が姿を現した。一緒嬉しそうな表情を見せたが、亜由美の様子に気づいて駆け寄ってくる。

「どうした? なにかあったのか?」
「ポストに……」

 亜由美は指を差すことしかできなかった。
 ポストを目にした鷹條の眉がふっと寄る。

「初めてか?」
 そう言った鷹條の表情がみるみるうちに真剣なものとなる。
 亜由美は首を横に振る。

 顔を強ばらせた鷹條には空気までピリッと引き締まるように亜由美は感じた。
「それ、まだ持っているか?」
「ええ。捨ててしまおうかとも思ったんだけれど、念のために……」

 なるべく封筒に直接触れないようにしながら手紙を持つ鷹條に亜由美の戸惑いは大きくなる。

 エレベーターの中で亜由美は鷹條に尋ねられた。
「つまりこれは一通目ではないんだな? 何度も来ているか? 中身は確認したか?」
 
 鷹條の矢継ぎ早の質問に亜由美は頷く。
「前のは開けて見てみたわ。写真が入ってたの。私を写したものが入ってた。コンビニにいるときのものとか、本屋さんで買い物しているときのものだったと思う」

「持っているんだな?」
 こくりと亜由美は頷いた。確か、状差しに入れたはずだ。それはリビングのカウンターの端の方に置いてある。

「状差しに入れてあったはずよ」
「何回目だ?」
「二回目だわ」
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