遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
「知人を通じてこちらの広見さんをご紹介されています。広見さんにもお話は通っているはずですので、お繋ぎいただけませんか?」

 圧のある対応にも怯むことなく真っすぐ目の前の受付担当者を鷹條は見返した。

「鷹條さん?」
 その時受付に一人の男性が姿を見せる。眼鏡を掛け身長が高く、身体にフィットした綺麗なラインのスーツを身にまとった雰囲気のある男性だ。

 栗色の柔らかくウェーブしている髪と真っ白の肌に切れ長な瞳がとても麗しい。

「広見警部、お時間いただき申し訳ございません」
 鷹條が綺麗な敬礼をするのに、受付の向こうの人物たちはあっけに取られている。

「いや、こちらこそ。わざわざご足労頂いてとても助かった。それにしても相変わらず美形だね、君は。そうか。ごめん、受付に私が通しておけばよかったね」

 広見が受付に向かって微笑むと「いえ、そんな……」というふにゃふにゃとした答えが返ってくる。

「こちらの鷹條警部補は警備局の職員だよ。広報を見ていないか? 先月辺り特集されているから確認するといい。なんだ、名乗ればよかったのに」

 鷹條が職員と聞いて受付の中は呆然としていた。しかも所属が本庁の警備局ならば一般の職員とは一線を画していることは明らかだ。

「いえ。プライベートでしたので」
「まあ、真面目な君らしいね? 警備局から話が降りてきたから私も驚いた」

「事案が事案でしたので」
「いい。正解だ。話を聞きたい。こちらへ」

 こちらへと案内されて、呆気に取られている受付の中のことは気にせず、亜由美と鷹條は広見と一緒に庁舎内のエレベーターへ足を向ける。
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