遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
2.男運悪すぎ問題
 彼はグラスを手にして、苦笑して周りを見るように亜由美に言った。

「大丈夫。みんな酔っぱらってて周りなんて見てないから」
「けど、気になってしまって」

「意外と真面目だね?」
 そんな風に言ってくれた人はいなくて、胸がきゅんとした。

「お酒は飲まないの?」
 ずっとソフトドリンクを飲んでいた亜由美だ。
「あの……あまり得意ではなくて」

 お酒の場で強引に飲ませようとすることはアルコール・ハラスメントなどと言われて会社でも強く禁じている。
 亜由美のいる会社はそういったことに厳しく、無理に飲ませる上司などもいない。

 彼は「すごく飲みそうなのにね?」とふふっと笑ったのだ。

 一見華やかな見た目の亜由美。
 確かにワイン片手にバーの片隅にいても、亜由美は違和感のない存在だろう。
 けれど、実際はそういうタイプではない。

「じゃあ、何が好きなの? 飲めなくて会社終わったら何してる?」
「普通に帰ります。あ、たまにデパートとか寄りますけど。あとは本屋さんとかで本を買ったりですね」

 可愛いもの好きの亜由美だ。ご贔屓ブランドのデパートコスメの限定コフレは買わずにはいられない。

 限定コフレの可愛さってば! 限定ミラーやファウンデーションのパッケージなど、飾っておくだけでも気持ちが上がる。

 それに少女漫画だ。
 好きな作家の新刊は紙本で買って浸って読むと決めている。

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