遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 例え自分が被害者であってもなんだか捜査に巻き込まれるなんて怖いような気もするからだ。

「ちょっと混同されやすいんだが、被害届があくまでも犯罪の被害を受けたと申告する手続きなのに対して、刑事告訴は犯人を処罰してほしいと求める手続きになって、速やかな捜査や検察への送付も義務付けられている」

 そこで広見は言葉を止めた。
「ただ……デメリットとしては被害届であったとしても、捜査が開始されたら協力しなくてはいけない」

 分かりやすく説明してくれる広見に亜由美は頷く。
「参考人として取調べを受けたり、実況見分……まあ現場検証ともいうが、これへの立ち会いを求められたりする。もしそういったことになったら最大限配慮はする」

 鷹條も隣で頷いてくれていた。広見があらかじめデメリットも説明してくれていることで、亜由美としては心の準備もできる。

 この人なら信頼できると思えてきていた。

「まあ、杉原さんの場合は鷹條さんがついているから、不安なことがあったら相談するといい。ここまで聞いて被害届はどうするか聞いてもいいかな?」

「出します」
「ありがとう。これであなたが護りやすくなる」
 亜由美は首を傾げた。

 ──護りやすくなる?

「管内の把握にもなるし、危険性に急迫性があれば警察署長の専決で接近禁止命令を出すことができる。その際にもすでに被害届が受理されていればこちらは動きやすい。また、その命令を無視すれば逮捕することもできる」

「例えば、マンション周りの巡回を当分増やしてもらうとかな」
「あ、あの! 大丈夫なんでしょうか? ご迷惑なのでは……」
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