遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
「警察法、第二条に定められてる。警察官ならだれでもこの責務を果たすと思うよ。警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもってその責務とする。警察の責務だ」

 隣で鷹條の背が伸びたのも分かった。それほどまでに大事で守らなくてはいけないものらしい。
 そして亜由美は広見の説明を受けながら、被害届を提出した。

  ◇◇◇

 自宅に帰ってきた亜由美はぐったりとしてしまった。ふんにゃりとソファに座る。その隣に鷹條が座った。

 きゅっと亜由美の肩を抱いてくれる。
 亜由美は緩くその胸にもたれた。

「お疲れ様。本当に疲れたよな? ありがとう」
 優しい声が頭の上から響いてつむじにキスをされた感触があった。亜由美は首を横に振る。

「こちらこそだわ。もちろん慣れないことで大変だったんだけど、千智さんのいる世界に少しだけ触れて大変なんだなって実感した」
 ふふふっと亜由美は笑う。

 確かに慣れないことで大変ではあったけれど、知らなかった世界に触れて、鷹條はこういうことを日常的にしているんだと考えるとその大変さも少しだけれど理解できた。
 鷹條の仕事の姿が垣間見えて、近づけたように感じたのだ。

「大袈裟とは思わないでくれ。本当に何が起こるかなんか分からないんだ。その中で俺が助けられることは限られてる。それでも大事なものは護りたい。全力を尽くしたいんだ」

 そう言って鷹條はふわりと亜由美の頬に手を触れる。顔を持ち上げられ覗き込まれて、近くに見える真剣な鷹條の表情に亜由美は胸を掴まれたようになった。
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