遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
14.このままでは済まさない
 久木に呼ばれて鷹條は小会議室に向かう。いつぞやのように、久木は鷹條の向かいにテーブルを挟んで座った。

「被害届は出してくださったんですね」
「はい。いろいろとありがとうございました」
「まだ、事件は終わったわけではないので油断しないように」

 久木に言われて、鷹條は表情を引き締め頷く。
「了解です」
 亜由美の件は事件番号を振られて、事件として取り扱っている。

 あの後、亜由美の家に帰ったあとに刑事課から連絡があって、亜由美と鷹條はマンションの集合ポストの実況見分に立ち会い、詳細な事情聴取もされている。

 その際に、ポストに入っていた郵便物は証拠品として押収された。
 むしろ亜由美としては側に置いておきたくなかったようなので、その方が良かったと言っていたが。

「防カメの提出も今依頼しています。集合ポストには必ず設置してありますからね。近いうち、姿を拝めるはずですよ。杉原さんは大丈夫ですか?」
「昨日はかなりショックを受けていました。あと、軽く見ていたことを反省したと言っていました」

 ふっと久木から笑い声が漏れる。
「可愛い人ですね」
 こくりと鷹條は頷く。
「とても素直で奥ゆかしい人なんです」

「真剣ですね」
「はい。大事な人です」

「そんな鷹條くんだから、官舎以外への帰宅も承認したんですよ。それに君は包み隠さずきちんと報告してくれている。それが一番大事なことです」
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