遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
「だからなんですね……」
「だから?」
「とても寄り添った対応だったんです。そういう方が幹部を目指すのはとても心強い」

「強くて、素晴らしい人ですよ。彼が所轄署にいる時に届けを出せたのはある意味運が良かった。これは内部情報なのでもちろん口外厳禁です」

「はい」
 鷹條の返事を聞いて、久木は表情を引き締める。それだけではないようだ。

「鷹條くん、二通目の手紙の中身は見ましたか?」
「はい」

 鷹條が発見した手紙は開封しないで、そのままビニール袋で保管していたのだが、証拠品として提出する際、確認をしていた。

 鑑識に渡す時に中身を確認したいので開封してほしいと言われたのだ。

 亜由美は開けたくないと言ったため、亜由美の許可を受け鷹條がその場で鑑識から手袋を借りて開封したのだ。

 中に入っていたのは前回と同じく写真。しかし今回は写真だけではなく手紙が添えられていた。

『別れろ!』
 白い便せんに大きく印刷された文字が見えた。一緒にいた亜由美が隣で息を呑んだ音が聞こえる。

 写真は鷹條と一緒に買い物しているときのものまで含まれていた。

 鷹條は自然と眉間にシワが寄っていた。
 純粋な悪意は力がある。
 こんなものを亜由美に一人で開けさせることをしないで済んで本当によかったと心から思った。

 その時のことを鷹條は思い出す。
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