遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
◇◇◇
「え? そんなことがあったの?」
期間限定発売のフラペチーノを一口飲んで、亜由美はこくりと頷いた。
仕事が終わったあと、姫宮商事ビルの一階にあるカフェで奥村に話を聞いてもらっていたのだ。
鷹條から周りで信頼できる人には打ち明けておいた方が良いと言われて、奥村には話しておくことにした亜由美だ。
「鷹條さんも一緒のときで良かったね」
本当にそれだけが救いだった。
「じゃあ、私も亜由美ちゃんの周りに不審な人を見かけたら声をかけるようにするからね! 全く……どんな奴なんだろ……」
「まだ、分からないんです。でも捜査はするそうなので」
うんうんと奥村は頷いた。
「今は捜査も進んでいると聞くものね。早く見つかって安心できるといいね」
「ええ」
「なるべく帰る時間を一緒にして、一人にならないようにしましょう。私も心配だから」
テキパキと奥村は提案した。亜由美は驚く。
「いいんですか?」
「うーん、むしろ駅までで申し訳ないけど。一緒にいた方が安心だもの」
「ありがとうございます!」
そこまでしてくれるとは思わなかったが、亜由美はとても嬉しかった。
今回は素直に鷹條に頼らなかったことで悲しい思いをさせてしまった。自分の遠慮で周りの人を悲しませてしまうのは本意ではない。