遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 素直に頼ることも相手への信頼の証でもあるのだと学んだ。

 ──良かった。打ち明けて正解だったんだわ。
 カフェで過ごしたあと、二人で駅まで歩く。

「そんなに綺麗な人だったの?」
「はい。とても警察官には見えなかったです」
 てくてくと歩きながら所轄署での話になった。広見のことを話すと奥村は首を傾げている。

「ふーん。キャリアって言うんだっけ? いわゆるエリートなんでしょ? 私は警察官ならこうもっといかにも! って感じの人が好き」
「いかにも……」
 それを言うなら鷹條も違うような気がする。

「そうねぇ……鷹條さんも素敵だけど、もっとゴツくてもいいかも」
「鷹條さんの上司の方はそんな感じです」

「え? そこ詳しく!」
 あら? 思ったよりも食いつきがいいわ?

「一度しかお会いしてないですけど……とても丁寧で……」
 一度しか会っていない久木のことを亜由美は一生懸命に思い出す。

「えーと、丁寧で……」
 なんかすごく怖いことを一条に言っていたのではなかっただろうか。

「怖いです」
 ん? なんか違うような……?
「いかにも警察官で、丁寧で、怖い??」

「ごめんなさい! 私の表現が悪いような気がします。怖いことを言っていたけどそれは一条さんに対してで、私には優しかったです」
「ううん。なんか分かる」

(今度はもっとうまく奥村さんに話せるように千智さんにきちんと聞いておこう!)
 ふんすっと亜由美は心の拳を固めたのだった。
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