遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
15.ストーカーの正体
 玄関を入った瞬間に強く鷹條に抱きしめられた。亜由美もその背中に手を回す。

 隙間がないほどに抱かれて、自然と二人の顔が近づいた。

 高鳴る鼓動と比例するように息が苦しくて何度も呼吸してしまうと、亜由美の耳にも鷹條の荒く乱れた息の音が聞こえる。

 服の上からそっと胸に触れられて身体がぴくっと揺れてしまう。

「感じやすい……可愛い」
 亜由美は鷹條にぎゅっと抱きついた。

「千智さんが触るから、だもん」
「ん? 俺が触ると気持ちいいの?」
 こくっと亜由美は頷く。

 こんな風になるのは鷹條だからだ。隙間もなくなるほど抱きしめ合いたいと思って、乱れる呼吸の音にすら興奮してしまう。

 視線が絡まって顔が自然と近づいた。鷹條の熱情を含んだ視線に亜由美は目眩を起こしそうだった。
 荒く乱れた呼吸と熱を持った舌が互いの口の中で緩く絡み合う。

「んっ……あ」
 気づいたら、服の中に鷹條の手が入っていて、肌に直接触れられていた。

「大丈夫……? 冷たくない?」
 ふるふるっと亜由美は首を横に振る。

「亜由美は暖かくて、柔らかくて気持ちいい」
 鷹條にしっかりと抱きしめられていて、なのに肌に触れる指は不埒で優しい。

 胸の飾りに鷹條の指先が触れた。
 またぴくんと身体が揺れる。
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