遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 これ以上声を抑えることなんてできない。
 亜由美は肩越しに鷹條に振り返る。

 熱っぽく亜由美を見つめる鷹條は色香が滴るようでその表情を見るだけでも胸が締め付けられそうだ。

「千智……さん」
「どうした?」
「こえ……っ、抑えられないの。塞いで?」

 亜由美の意図を察した鷹條は向かい合わせになり、亜由美の口を唇で塞いだ。

 律動が激しくなる。
「も、無理っ」
「もうちょっと、頑張って」

 声が漏れそうになるとその口元をキスで塞いで、二人は同じタイミングで絶頂を極めた。

 ぎゅうっとお互いの身体を強く抱き合って、はぁはぁと荒くなる呼吸を整える。

「ごめん……」
「どうして謝るの?」
「可愛すぎて、我慢できなかった」

 鷹條が我慢できないなんてことの想像がつかないので、亜由美はくすっと笑ってしまう。

「ん? 笑った?」
「だって、千智さんが我慢できないなんて想像できなくて。いつもストイックなイメージだから」

 ふっと苦笑するような表情を浮かべて、鷹條は亜由美をきゅっと抱きしめた。

「亜由美が可愛すぎる。俺が触るから感じる、とかは我慢できなくなるだろう。大事にしたいんだ」

 その言葉に亜由美は胸が温かくなって、鷹條を抱きしめ返した。
「大事にされてるよ? 私が千智さんのことを好き過ぎて感じちゃうんだと思うの」

 お互い顔を見合わせて笑ったあと、自然と顔が近づく。その時したキスはお互いへの好きの気持ちと大事にしたい気持ちが重なったものだったかもしれなかった。
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