遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 着替えた二人はキッチンで食事を作ることにする。結局、ルーを使えば早いからと鷹條がカレーを作ることになった。

 鷹條の作るカレーは野菜をフードプロセッサーで細かくしてしまうのが特徴らしい。
「火を通すのに時短できるからっていう単純な理由だけどな」

 豚バラも薄切りなのは同様の理由だそうで、短い時間で調理することを優先しているのが鷹條らしい。
 軽く火を通して、香りが出てきたらお湯を足して、ローリエを入れている。

 カレーというのは家庭によって作り方が異なるもので面白いなぁと亜由美は感心して見ていた。

 鷹條がカレーを作っている間に亜由美もサラダを作ったり、お風呂の準備も済ませる。

 鷹條はキッチンに立つことを全く厭わないし、逆に亜由美がキッチンにいる時はお風呂の準備をしてくれたり、洗濯物を畳んだりもしてくれる。

 新婚生活ってこんな感じなんだろうか? と想像して亜由美は慌てて否定する。

(ち、違うからっ。千智さんは今はただストーカーのことがあるから側にいてくれているだけ)

 つい幸せな新婚生活というものに思いを馳せそうになって、慌てて亜由美は今日のことを報告した。奥村のことだ。

「だからね、奥村さんはいかにも! って感じの方が好きなんですって」
「久木さんはいかにもって感じだな」

 キッチンで手を動かしながら亜由美の話を聞いて、鷹條は苦笑していた。
< 149 / 216 >

この作品をシェア

pagetop