遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
(知り合い……?)
 一瞬だけ感じた違和感はその後さらに大きくなる。

 お店の中に入って注文をしたのだが、取り皿がなかったことに気づいた彼は舌打ちした。
(い、今、舌打ちした!?)

「ちょっと!」
 お店の人を呼ぶ横柄な態度に亜由美の方が驚く。

 ひとしきり文句を言って、お店の人が「申し訳ございませんでした」と頭を下げているのに「二人で食べるのに取り皿を持ってこないとかあり得ない」とか「あれほど待たせてこの程度のサービスしかできないなんて、店として終わってる」とか散々聞かされた。

 そこでさすがにあれ? と思ったのだ。
 ──この人、ちょっとモラハラっぽくない?

 テーブルに来たパンケーキの写真も撮っていたし食べているときは笑顔だったし、亜由美は気持ちを落ち着かせる。

 けれど、その後一緒に食事へ行った帰りにホテルへ誘われたのを断った時には
「俺が誘ってんのに断るってどういうこと? もったいつけるほどのものかよ?」
 と言ったのだ。

 あまりのことに亜由美は呆然とする。
 初めての彼氏でよく分からなかったということもあったけれど、さすがにこれはないかも……と思い始めていた矢先のことだった。

「別に亜由美だけってわけでもないし。終わりにしよう」
 そう言った彼に亜由美はにっこりと笑った。
「そうね」

 亜由美の即答に「はあ!?」となっていたが引き留めるとでも思っていたのだろうか。

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