遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 彼は地面に身体が押し付けられていてさえ強気だった。淡々と鷹條が返す。

「残念だったな。警察官だ。複数目撃者もいる。逃げられると思うなよ。ストーカー規制法以外にも余罪があるようだな。すぐに送検してやるからな」
「そんなことできるか!」

「できる。自分がやったことを反省しろ」
 暴れるので彼は鷹條に抑えられていた。
「離せよっ! 警察官がそんなことしていいのか!?」
「暴れるからだ。一般市民に迷惑がかかる」

 程なくするとたくさんの警察官が集まってきて、彼を取り囲む。手錠をかけられ、複数の警察官に囲まれつつ彼はパトカーに乗せられていった。

 制服の警察官の一人が鷹條に敬礼をした。鷹條もそれに軽く返す。
「鷹條警部補、お見事でした」

「ありがとうございました。彼女からも調書は取ると思いますが、連絡先は把握しています。今日は帰してあげても構いませんか?」
「もちろんです!」

 そんなやり取りのあと、鷹條は亜由美に向き直った。
「頑張ったな」

 ずっと我慢していた。
 頑張ったなという鷹條の声を聞いて亜由美は泣きそうになり目元がきゅうっと熱くなる。

 亜由美の目から涙が零れそうになっているのに気づいて鷹條が亜由美を強く抱き締める。
「本当に、偉かった」
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